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2021.12.01

直前!改正電子帳簿保存法の最低限、とりあえずこれだけ

直前!改正電子帳簿保存法の最低限、とりあえずこれだけ

はじめに

いよいよ来年1月1日に迫った改正電子帳簿保存法の施行。当ウェブサイトでは過去何度かにわたり改正電子帳簿保存法を解説してきましたが、この法律については巷間、色々な人たちの色々な思惑が入り混じって百家争鳴の状態です。そこで、その今年の総まとめとして、改正電子帳簿保存法に対応するために現時点で最低限しなければならないこと(私見)を書き残したいと思います。これが電子帳簿保存法の最低限です。

そもそも、電子帳簿保存法とは(おさらい)

そもそも電子帳簿保存法が定めていることについては以前のブログ記事に述べましたが、この法律、平たくいえば、法人税法や所得税法、消費税などの法律が定めている帳簿や書類等の保存に関する規制はそれらを紙で保存することを原則として成り立っているところ、その例外としての電子データでの保存について定めているものです。したがって、電子帳簿保存法が改正されたといっても、世の中の帳簿や書類のほとんどは引き続き紙保存によることが原則なのです。この点をまず押さえておきましょう。

また、以上のような電子帳簿保存法の性質から、この法律に違反したときの具体的なリスクは、法人税法や消費税法といった各税法に違反することになるという形で表れます。その代表例は、青色申告の承認取消と消費税の仕入税額控除の否認です。この点もご記憶ください。

電子帳簿保存法が定める保存方法の類型

電子帳簿保存法は、本来紙で保存するのが原則の帳簿や書類について、以下のような類型別に電子データでの保存を行う場合の要件等について定めています。

帳簿 → 電子データとして作った帳簿をそのまま電子データで保存する
決算書類 → 電子データとして作った書類をそのまま電子データで保存する
取引書類 → 電子データとして作った書類をそのまま電子データで保存する 又は 紙で授受した書類をスキャナで電子データに変えて保存する

ここでいう決算書類とは、貸借対照表や損益計算書、あるいは棚卸表など決算を組むのに作った書類のことです。また、取引書類とは、請求書や見積書、領収書といった書類のことだとご理解ください。自分で作って交付したものも、他人からもらったものも共に含みます。

さて、これらの保存の類型について、今回は敢えて説明を加えません。それは、以上の書類については来年以降も紙で保存するのが原則であることが変わらないからです。電子帳簿保存法の改正に最低限度で対応するのであれば、以上に掲げる書類は全てこれまでどおり紙で保存しておけば十分です。それ以上の情報を頭に入れていただく必要はありません。

問題は、電子帳簿保存法の改正で、

電子取引情報 → 電子データのまま保存する

が義務になったことです。電子取引情報とは、平易にいえば、電子メールにファイルを添付する、あるいはウェブサイトからファイルをダウンロードする、といった方法で授受する請求書や領収書、見積書といった情報のことです。来年1月1日以降に授受する電子取引情報からこれを電子データで保存することが完全義務化され、一々紙に印刷して保存するという方法が認められなくなりました。最低限の対応という意味では、このことにだけ何らかの対応を図ればそれで足ります。

電子保存、どのように行えば?

電子取引情報の電子保存、どのように行えばいいのでしょうか。一番簡単なのは、電子帳簿保存法に準拠する機能を備えたシステムを使うことです。やっと最近になり、改正電子帳簿保存法対応の会計システムがリリースされ始めています。しかしその導入のためには大なり小なり金銭的な負担を要しますので、授受している電子取引情報の量が多くない事業者ではまだ検討の俎上に上がりづらい状況でしょう。

そこで、国税庁はシステムによらずに法が定める要件に則った保存を行い得る方法として以下の方法を例示しています(注1)。すなわち、もらった、又は送った電子データ(PDFファイル等)を、以下のようなルールでファイル名を自社所有のサーバ上やクラウドストレージサービス上にご保管すればいいとされています。

① PDFファイル等のファイル名を「取引年月日・取引金額・取引先名称」に変える。
② そのファイルをサーバ等の上に取引年・月別のフォルダを設けてそこに保存する。

この方法による場合、更に、一定の規程を社内に整備しておくことが必要になります。その規程の例も国税庁が示してくれています(注1)。

まずは、以上のような方法での対応を検討しましょう。事務まわりの面倒を1人で見ているような会社であれば

確かに義務化された、しかし

さて、確かに義務化された電子取引情報の電子保存ですが、仮にその義務に違反したとしたら何が起こるのか。当初、この義務違反を盾に、課税庁サイドによる青色申告の承認取消処分が乱発するのではないかという懸念が実務界では持たれていました。しかし、先月に国税庁が以下のような見解を公表し、差し当たってはその危険はほとんどない、ということが明らかになりました(注2)。

電子データの一部を保存せずに書面を保存していた場合には、その事実をもって青色申告の承認が取り消され(…中略…)るのではないかとの問合せがあります。(…中略…)従来と同様に、例えば、その取引が正しく記帳されて申告にも反映されており、保存すべき取引情報の内容が書面を含む電子データ以外から確認できるような場合には、それ以外の特段の事由が無いにも関わらず、直ちに青色申告の承認が取り消されたり(…中略…)するものではありません。

この見解を読むと、電子取引情報の電子保存については、要件を充足することに汲々として結局データそのものの保存ができていなかったという事態を招くくらいなら、紙に印刷してそれを保存しておいた方がマシだ、ということがいえそうです。

無論、来年1月1日以降、電子取引情報の電子保存は義務になりますので、これを遵守する努力は払わなければならないでしょう。しかし少なくとも当面の間、電子取引情報も紙で出力して疎漏なく保存しておくことをまず優先し、電子帳簿保存法が求める保存方法への移行は徐々に進めるという対応も、最低限という意味では検討の俎上に上がることになるのではないかと考えられます。

おわりに

以上まで述べてきた通り、電子帳簿保存法が改正されたとはいえ、実はすぐに対応を図らなければならないことはそう多くはありません。もちろん、帳簿や書類が電子化することによって仕事がシンプルになり効率化するという側面は確実にあり、そういうメリットを享受するために電子帳簿保存法の積極的な活用を検討するのは”アリ”です。次回は、その”アリ”な電子帳簿保存法活用法について論じてみたいと思います。

税理士法人峯岸パートナーズ新宿オフィスでは、電子帳簿保存法の改正に関するアドバイザリーやセミナーのご依頼を積極的にお受けしております。是非ご用命ください。

(公認会計士・税理士 峯岸 秀幸)

(注1)国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和3年7月)」(2021年12月1日最終確認)問12及び問24を参照。
(注2)国税庁「問い合わせの多いご質問(令和3年11月)」(2021年12月1日最終確認)補4を参照。

  ***本記事のタイトルで使用している写真はAya Hirakawaさんの作品です。