企業の税務 corporate-tax

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2021.12.10

令和4年度税制改正大綱の内容を速報します

令和4年度税制改正大綱の内容を速報します

はじめに

本日、自由民主党・公明党から令和4年度税制改正大綱が公表されました。その要点を摘出し、以下のとおり速報します。

改正電子帳簿保存法対応の猶予措置

来年1月1日からの電子取引情報の電子保存の義務化ですが、同日から2年間、以下の条件を満たす場合に限り、電帳法が定める保存要件を満たさない電子保存を認めるという猶予措置がされることになります。

・所轄税務署長が電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存できなかったことについてやむを得ない事情があると認めること
・保存義務者が質問検査権に基づく電磁的記録の出力書面の提示提出に応じることができるようにしておくこと

この猶予措置については、猶予のためには「所轄税務署長がやむを得ない事情があると認めること」という条件がついていること、紙出力保存を正面から容認するという内容の措置ではないこと、の2点にご注意ください。特に前者の「やむを得ない事情」が具体的にどのような事実関係を指すのかについては、今後国税庁等による見解の公表が待たれます。

賃上げ税制の改組・拡充

大企業向け・中小企業向け共に、賃上げ(所得拡大促進)税制が以下のとおり改組・拡充されます。

(大企業向け賃上げ税制の改組)
・継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額(前期の継続雇用者給与等支給額)に対する増加割合が3%以上の場合、控除対象雇用者給与等支給増加額の15%の税額控除を認める。
・増加割合4%以上の場合、控除率を10%上乗せする。
・教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が20%以上である場合、控除率を5%上乗せする。
・資本金の額等が10億円以上、かつ、常時使用従業員数が1,000人以上である場合、給与引上げ方針、取引先との適切な関係の構築方針その他の事項をインターネットを利用して公表し、そのことを経済産業大臣に届け出ている場合に限り本税制の適用が可能。

(中小企業向け所得拡大促進税制の拡充)
・雇用者給与等支給額の比較雇用者給与等支給額に対する増加割合が 2.5%以上である場合、控除率を 15%上乗せする。
・教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が 10%以上である場合、控除率を 10%上乗せする。

少額の減価償却資産の損金算入・一括償却資産の損金算入の一部不適用

少額の減価償却資産(取得価額10万円未満)・一括償却資産の対象から、貸付け(主要な事業として行われるものを除く。)の用に供したものが除外されます(法人税・所得税共通)。これはドローンや足場のリースを利用した節税策を封じるための改正と思われます。

適格請求書発行事業者の登録の一部改正

免税事業者が令和5年10 月1日から令和11 年9月30 日までの日の属する課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受ける場合には、その登録日から適格請求書発行事業者となることができることになります。

改正前は、課税期間の初日からしか適格請求書発行事業者になることができませんでした。インボイス制度の開始後も暫くの間、免税事業者は様子を見ながら適格請求書発行事業者(=課税事業者)への移行を検討することができることになります。

法人版事業承継税制の特例承継計画の期限延長

法人版事業承継税制(特例)における特例承継計画の提出期限が1年間延長され、令和6年3月末日までとなります。なお、今回の税制改正大綱において、令和9年12月末までとされる法人版事業承税制(特例)の期限延長は行われない旨が言明された点には注意が必要です。

住宅ローン控除の改正

住宅ローン控除の適用期限が4年間延長されるとともに、以下の点が改められることになります。

・居住年が令和4年~5年の場合の借入限度額が最高5千万円に。令和6年~7年の限度額は減少。
・控除率が0.7%に縮減。
・控除期間が13年に延長。
・適用対象者の所得要件が2千万円に縮小。

なお、税制改正大綱では控除期間の13年への延長措置は現下の厳しい経済状況を踏まえた当面の措置と述べられており、将来的な短縮も予測されます。

住宅取得資金贈与の非課税制度の延長

直系尊属から受けた住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税措置が令和5年末まで2年延長されました(住宅取得資金贈与の相続時精算課税制度の特例措置においても同様)。これに伴い、以下の点が改正されます。

・非課税限度額が以下のとおりに変更される。
→耐震、省エネ又はバリアフリーの住宅用家屋 1,000万円
→上記以外の住宅用家屋 500万円
・適用対象となる既存住宅用家屋の要件について、築年数要件を廃止し、新耐震基準に適合している住宅用家屋であることを加える。
・受贈者の年齢要件を18歳以上(現行20歳以上)に引き下げる。

その他の改正項目

以上のほか、以下のような改正がなされることになります。

・大企業の研究開発税制等の税額控除規定を適用するためには賃上げが要件となる。
・オープンイノベーション税制が拡充される。
・グループ通算制度における投資簿価修正制度が一部改正される(いわゆる離脱子法人の買収プレミアムの譲渡原価不算入問題の解決)。
・エンジェル税制が拡充される。
・隠蔽仮装行為に基づき確定申告書を提出している場合等で根拠資料等がない費用等の損金(必要経費)不算入制度が創設される。
・帳簿の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置が創設される。
・所得ゼロでも財産10億円以上の者が財産債務調書の提出義務者に加えられる。

以上の各改正項目については、今後、国税庁その他の省庁から追加的な情報が公表されたり、改正条文案が公表されることで詳細が判明することがありますので、ご注意ください。当法人としても可能な限り続報いたします。

税理士法人峯岸秀幸会計事務所では、税制改正に関する記事執筆やセミナーのご依頼を積極的にお受けしております。お気軽にご連絡ください。

(公認会計士・税理士 峯岸 秀幸)

  ***本記事のタイトルで使用している写真はAya Hirakawaさんの作品です。