税務調査 tax-audit

税務調査
2021.02.23

SNSと税務調査~ある税金詐欺の女王の場合

SNSと税務調査~ある税金詐欺の女王の場合

皆さんが税務調査を受けることになれば、課税当局は臨場前の段階で既に収集可能な情報は収集し終えている状態であると想定した方がいい、というのが実務家としての実感です。当局にはどこまでの範囲で情報を収集することが法的に認められているのかという論点は当然あり、実際の税務調査になればそのことも踏まえて対応します。しかし同時に、我々は情報を収集されてしまっているという現実にも向き合わなければなりません。

もっとも、課税当局が誰でも検索・閲覧可能な情報を見てきているからといって、そのことまで非難するわけにはいかないでしょう。どんな個人であれSNSを覗けばある程度の情報が得られる時代です。近年の有名人による脱税事件でも、当人がSNSに派手な私生活についてや課税当局を非難するような内容を投稿していたことが事件の発端の1つになった可能性を示唆する報道が散見されます(注1)。十分に有り得ることです。

今回は、皆様にはSNSの節度ある(?)ご利用をお願いしたいという注意喚起の意味を込めて、米国で現実にSNSへの投稿が契機となって脱税が露見した事件をご紹介しましょう(注2)。

ラシア・ウィルソンというフロリダ州タンパの女性。彼女は他人名義の不正な納税申告書を提出する手口で、少なくとも224万ドル(1ドル105円換算で約2億3500万円)の不正還付を受けていました。そのことが中々露見しなかったことに油断してしまったのか、はたまた世の中を嘗め切っていたのか。彼女は自身のフェイスブックアカウントにこんな投稿をしてしまいます。

“I’m Rashia, the queen of IRS tax fraud, … I’m a millionaire for the record. So if you think that indicting me will be easy, it won’t. I promise you.”
「私はラシア、税金詐欺の女王…私は大金持ちよ。私を捕まえるのが簡単だと思うなら大間違い。断言するわ。」

なんとこの投稿がIRS(内国歳入庁。日本でいう国税庁)の調査官の目に止まってしまい、彼女は起訴されてしまいます。裁判ではこの投稿も証拠として採用されることとなり、結局、裁判所は彼女に禁固21年と300万ドル以上の没収金を言い渡します。時に彼女は27歳、3人の子供の母親でした。刑期を終える2031年1月、彼女の末っ子は23歳なっているそうです。

彼女の名前をウェブサイトで検索すると、若い女性が両手に札束を鷲掴みにして微笑む画像が出てきます。こんな投稿をしておいて悪事が露見しないわけがないのです。近年、諸外国ではSNSの税務調査での活用が進んでいると聞きます。そもそも脱税自体が恥ずべき行為でそれをひけらかすなど論外なのですが、しかしSNSに不用意なことを書き込むと税務調査で痛くもない腹を探られることになるかもしれません。十分注意しましょう。

税理士法人峯岸パートナーズ新宿オフィスでは、税務調査の立会や税務に関するセカンドオピニオンのご相談を随時受け付けております。お気軽にご相談ください。

(注1)例えば幻冬舎GOLD LINEの記事(2021年2月23日最終確認)を参照。

(注2)本事件(U.S. v. Rashia Wilson, No. 15-11089 (11th Cir. 2016))の概要は2021年2月にある勉強会で立命館大学法学部の望月爾教授にご講演をいただいた際にご教示いただきました。また、ここに記載した事実関係はTampa Bay Timesの記事やForbesの記事(共に2021年2月23日最終確認)を一部参照しています。

***本記事のタイトルで使用している写真はAya Hirakawaさんの作品です。

(公認会計士・税理士 峯岸 秀幸)